昨日宅配されたCDの中に良いものと普通のもの(汗・があったので全部まとめて紹介しておきましょう。いろんな意味でですが、期待して「まだ来ねぇのかな〜」と待ちわびてた作品も多かったのでね。何だかジャズ・フュージョンばかりですけどもっ。
Give You Now Vs Now/Jason Linder
2009年リリース。ンデゲオチェロ・プロデュースのこの作品は良い!ンデゲオチェロはいつも好きなんです。大分前のリリースですが、今のところの彼女名義最新作もパンキッシュで好きでした。表面的なスタイルは頻繁に変えていく彼女ですが、何をやっても「やっぱカッコイイんだな〜」といつも思わせてくれる人なんですね。しかし数年前のンデゲオチェロ・プロデュースのジャズ作品(タイトル失念)は愛聴盤にはならなかったので、この盤もンデゲオチェロ・プロデュースそのものにはそれほど期待していませんでした。
でもJ・リンダーのビッグ・バンドものは割と好きだったので、その彼とンデゲオチェロの組み合わせには何かありそうな予感があり購入したのですが、とても良かった。まずはソフト・シンセ・エミュレートではないアナログ・シンセ・サウンドで幕を開け、ウェザー、ソフト・マシーン的アプローチに耳を奪われます。そして現在トレンドといっても良いであろう”20世紀の米国人作曲家テイスト(叙情75%・不協和25%)”も多くはないですがちりばめられています。またリズム・トリック的な部分も非常にコンテンポラリーな手法を心得ていて”わかってる感”のバランスが秀逸。ンデゲオチェロのプロデュースはエンジニアにボブ・パワーを配し、音色的には(アンダーグラウンドではない)クラブ・ミュージック的方向に統一したことが最大の功績といったところ。ひらたくいえばインコグニート聴いてる人にも違和感ない質感って感じですか(笑。
Highway Rider/Brad Mehldau
これ待ってました。久々のジョン・ブライオン・プロデュースってことでストレート・ジャズでないB・メルドー作品。このコンビでの前作『Largo』は最高でしたからね。で、今回は2枚組なんだけどやはり素晴らしい。コンセプトとして、上で書いた”20世紀の米国人作曲家テイスト”が全体を貫いています。ポップ・フィールドでこのアプローチを施すのに、20世紀的手法では叙情75%を作曲、ベーシックな演奏で。不協和25%の部分を異化作用をもたらす音楽家(ビル・フリとかジョー・ヘンリーでのオーネットとか)の投入やカオスなセクションを一部分作るなどしてアプローチしていたと思います。しかし21世紀的手法においては叙情75%・不協和25%の担い手を明確化せず、まず作曲において両者を包括し、叙情の中にも頻繁に不協和も表出させる。そして演奏においても”異化作用の人”といった役割分担はなく、演奏者それぞれが叙情75%・不協和25%を適宜配していく、といった手法になってきています。手法が血肉化して”歌い方”になったんですね。因に上記パーセンテージは勝手なイメージですよ、もちろん。
Interspirit/Anthony Jackson・Yiorgos Fakanas
これはアンソニー自身名義では初!っという情報を聞き、まずは驚き、喜んだんです。しかし連名で僕は存じ上げない方のお名前があり、しかも彼もベーシストだということで「もしかしたら〜・・」とも思っていました。結論からいうと、やはり”もしかしてしまった”方です。悪いという意味ではないですけど。。アンソニーはもともとソロをあまりやらない人なので、全てのベースでのアドリブ・ソロはYiorgos Fakanasというベーシストによります。アンソニーはいつも通り完璧なプレイをしていますが、自己名義を冠した意味はちょっとわかりかねますね。自己名義であることで期待してしまうと欲求不満になってしまう。いつかは単独自己名義でお願い致したいものです。音楽はウエックルとギャンバレが参加したフュージョンです––といえば何となくわかるでしょ(笑。関係ないけどアンソニーでソロらしいソロはバディ・リッチ『タフ・デュード』の2枚目、ファンク・ファクトリー『ファンク・ファクトリー』の一曲目、廃盤多いけどアイウイットネス関連辺りがよろしいですかね。映像でD・グルーシン、ガッド、リトナー等と武道館でやったライヴでの「カウントダウン」、G・ワシントン・Jrのライヴの最後の曲辺りを観て、その凄まじさを再体験してみたくなりました。
Truth Be Told/Mark Egan
小編成でヴィニーなので買いました(笑。マーク・イーガンにはあまり注目したことがありませんが、最近自己のレーヴェルを立ち上げたようで、旧譜の再発や新譜リリースなど積極的な活動を耳にします。予想通りというか、その範疇を全く飛び出ない音楽ではありますが、それでも僕は満足です。なんせヴィニーですからね。
Reunion/Jeff Lashway
小編成でヴィニーなので買いました(再笑。Jeff Lashwayとヴィニーは古い知り合いのようで二人の’74年の
写真が載っています。そういうの微笑ましいです。この盤は4ビート中心の盤で、最近のヴィニーの4ビート・アプローチが沢山聴けて良いですね。ソロも結構あります。
One Way Road/John Butler Trio
やっとジャズじゃねぇ、と思ったらCDシングル(笑。CDシングルなんて買うのどれくらい振りですかね。前のアルバムが好きだったので、もうすぐ出る(出た?)新作を待っていたのですが、「One Way Road」のライヴvers.もここには収録されているということで購入しました。ライヴvers.は弾き語りなので、曲の原型を知るという意味では興味深い、くらいのものでしたが。どちらにしろアルバムは楽しみですっ。
コメントにも書きましたが、
日曜日のイントキ・イヴェントに
お越し下さった方々、
本当にありがとうございました!
当日かけた曲と、かける予定だったリストを
編集部に提出致しましたので、
こちらにもあげておきます〜。
曲名/アルバム名/アーティスト名/メディア
※かけた曲
The Right One/Harlow o.s.t/Neal Hefti/CD(ステレオ)
Holiday/Revolutions/Jim beard/SACD(サラウンド)
Roundabout/Fragile/Yes/DVA-A(サラウンド)
※予定されていた曲
サラウンドに主眼をおいたセレクト
1.down here on the ground/breezin/george benson/dvd-audio
2.smile/the movie album/barbra streisand/sacd
3.short people/little criminals/randy newman/dvd-audio
4.the goodbye look/the nightfly/donald fagen/dvd-audio
+映像(長いものは抜粋)
5.fred/live at the yoshi's/a.holdsworth&a.pasqua/dvd
6.one phone call(9分30秒から)/the montreal concert/miles davis
7.play/mike stern live
※ここからはステレオ
+映像
you gotte try/buddy rich memorial scholarship concerts/vinnie colaiuta
night in tunisia/live/chaka khan
ここからは音のみsacd,cd,dvd-a stereo
teasin eyes/hiram bullock
i wonder what you're like/robert kraft
i hang on your every word/amy holland
walk in love/david batteau
oh no margarita/patti austin
〜〜etc
等諸々様子をみて対応する"予定"でした(笑。
毎回、アルバム制作では事前に歌ものが何曲、
インストが何曲、と決めてから制作に入ります。
歌ものの作曲は制作前にほとんど終えているの
ですが、それでも数曲は制作しながらの作曲に
なります。しかしインスト数は制作終盤の増減
ありますが、歌ものの曲数はなかなか変えられ
ません。『Ship〜』シリーズは一曲毎に個別の
シンガーをフィーチャーする形をとっています
からね。歌って頂く方を考え、依頼し、ご返答
頂き、キー合わせをしetc、etc・・・という長
〜い段取りがあるので、途中で歌ものの増減は
不可能といって良いシステムなんです(笑。まぁ
締め切りなければ可能ですが→でも締め切りな
ければ完成しないかも知れませんし(苦笑。と
いうシステムでの制作も終盤、段々曲順も考慮
に入れつつ、作曲すべき曲のタイプを考えるの
ですが、アルバムを締めるに相応しい曲がない
と思い、この曲を作曲しました。作曲という意
味ではこの曲か「夜奏曲」どちらかが最後だっ
たのですが、はっきりしません(汗。大丈夫か、
記憶 !by 大竹
ラジオでも言いましたがここ数年興味の対象に
なっていた”ブルース的なもの”に拠った曲です。
何故だかはわかりません。世間的な、あるいは
身近にある憂鬱の肥大の影響でしょうか(笑。
まぁだから門外漢がブルースってーのは陳腐極
まりないので違うということにしておきますが、
とにかく”ブルース的なもの”をよく聴いていま
した。
といってもこの曲は12小節のブルース・フォー
マットではありませんし、楽理的にブルースを
再構築した曲でもありません(部分的にはみら
れますが)。ましてやコアなブルース研究の成
果でもありませんし、キャプテン・ビーフハー
トにみるブルースの解体、といった視点とも全
く違います。構造的、理念的にどう解釈しよう
とも”ブルースっぽい”くらいの言い方が丁度良
いと思います。
しかしエリントンから始まり、C・ミンガス、R
・カークがわりと大きな編成で奏でるブルージ
ーな響きがここ数年急に新鮮に、いや、それ以
上ですね、”必要”と感じられてきたのは確かな
んです。そしてそれをそのまま演らずして、通
常の歌ものフォーマットに滑りこませることを
考えていました。
前述のラジオではミンガスの「Goodbye pok
-e pie hat」、B.ストレイホーン「A flower is
a lovesome thing」、ジャコの「3views of a
secret」、タイグアラで「Hoje」をかけました
が、他にもミンガス『Let my children hear m
-usic』『Pre-Bird』R.カーク晩年の「Giant st
-eps」演ってるアルバムなどには同質の響きが
詰まっています。とかいっておきながら、J・
ベックvers.の「Goodbye poke〜」が根底に
あるような気もします––昭和の高校生っ(笑。
上記のような動機で作曲しはじめたわけですが、
動機におけるエッセンスを違った形で表現、統
合できた時が一番嬉しい瞬間ですね。
そして前曲同様、この曲もヴォーカリストに迷
いませんでした。作曲後すぐに「吉田美奈子さ
んに絶対歌って頂きたい、美奈子さん以外には
いない」とまで思ったのです。
美奈子さんには前作で一曲作詩をお願い致しま
した。その際に数度やりとりをし、ライヴに誘
って頂いたので、面識はあったのですが、それ
から4年以上が経っています。想いを込めて打
診し、そして御快諾頂きました。嬉しかった。
また曲の真意をすぐにご理解頂き「エリントン
の作品の系譜にあるのでは」と勿体ないお言葉
を頂きました。再び”嬉しかった”!
その後間もなくして仮歌の為お越しいただいた
のですが、譜面を見ながらキーを決めつつ、ス
キャットで歌って頂いたのですが、そのvers.
もリリースしたいくらいのものでした。歌詞こ
そありませんが、それは既に音楽そのものでし
た。––オケ以外は、ですが。そしてその時、歌
詞内容について、陰鬱な時代、しかし音楽の役
目として希望を持てる表現をしなければいけな
いのではないか、というような会話をした記憶
があります。そして美奈子さんはこの素晴らし
い歌詩を締め切り日数+約12時間(くらいでし
たよね・笑)で書き上げたのです。真摯なメッ
セージとともに楽曲の背景を思わせる描写、遊
び心にはニヤっともさせられます。
Come Sunday!
そして美奈子さんの歌唱は言葉、メッセージを
心の奥深く焼き付けてしまいます。唯一無二と
いう言葉をこれほど誇張なく使える機会はそう
ありません。
ポップスが陰鬱な時代感を一時でも忘れさせ、
癒し、元気付けるのは当然。しかしポジティヴィ
ティと同時に問題意識を芽生えさせる効果があ
ればいう事なし。そこまでいくとポップスの役
目としては”極北”。しかしある時代背景におい
ては非常に有効、理想的ですね。そしてそれは、
とある精神状態の方々にはそう機能し、そうで
ない方々には良きポップスとして機能すること
でしょう。まっ、そうであると良いな〜、とい
ったところです(笑!
ライナーはここまで!
いや〜音楽の文章化はもちろん不可能ですが、
自作だけに、それにまつわることを書くだけ
でも大変でした。
なによりも”聞かれてもいないことを話す(書く
)”のは相当難しいです(笑。
飲み屋で延々と自分史を語る酔っぱらっいのよ
うでなければ良いのですが(汗。
まっそうではないことを祈りつつ、何度も繰り
返しアルバムを楽しんで頂ければ嬉しいです。
お付き合いありがとうございました。
今は『Ship〜』シリーズに続く別フォーマット
での冨田ラボを画策、準備中です。それほど変
化しないかも知れませんし、ガラっと変わるか
も知れません(多分前者・苦笑)。
乞うご期待というところ!
って、ブログもここからまた2年は空けません
よ。こんなに長文はない予定ですが(当然っ、
つらつらと何事かは書き記していきますの
で引き続きよろしくお願い致します〜。
書き初めに”継続”の文字を選んだ気分です(笑。
序文でふれた通り『Shipahead』のレコーディ
ングはこの曲から始まりました。厳密にいうと
映画の仕事の一部でもあったので、この曲の作
業中はアルバムを制作している感じではありま
せんでしたが、ここから始まったのは間違いあ
りません。
その映画との関わりは純然たる映画音楽(いわ
ゆる劇伴)全てを担当するわけではなかったの
ですが、内容がバレエ映画だった為どんな形に
しろオーケストラルな楽曲にはなるだろうと予
想はしていました。そして映画サイドから、映
画全体を通してテーマとなるようなリフを作っ
て欲しいとの要望があり、まずこの曲のイント
ロでもあるリフから考えはじめたのです。そし
てこのリフは映画に使われた歌もの、インスト
数曲に(ものによってはかなり形を変えて)流
用されています。2009年リリースの1、2枚目
のシングルに収録されているインストもそのリ
フを使用したものです。
しかしそのリフをイントロ、Aの部分にして歌
ものを作ろうというのは最初から考えていたこ
とでした。インストを先に作り、それを歌もの
に改変するよりも、歌ものとしての説得力を持
たせたかったのが理由です。
そしてこの映画はアジア圏での上映も予定され
ているとのことだったのでいわゆる”歌謡曲”的
な要素を含ませようとのアイディアも浮かんで
いました。別にアジア圏の音楽的嗜好を各国別
にリサーチした訳ではありません(笑。ブラッ
ク・ミュージック的な要素を除けば、アジア圏
各国に共通するものは現代でも歌謡性くらいし
かないであろう、というゆる〜い予測です––そ
れほど外れてはいないと思いますが。
そしてマイナーでコードの動きが少ないAから、
Bで少し歌謡性を、そしてサビはより歌謡性に
満ちた方向で作曲をしていました––でもここで
いう”歌謡性”は言葉の意味として、厳密に正
しいとは言い難いですね。”昔の歌謡曲的な雰
囲気=メロディが多くを語る”くらいのものだ
と思って下さい。
そんな感じでワン・コーラス作り終え、サビを
聴いていると、ふと頭にある曲が浮かびました。
すぐにマイケル・ジャクソンの『Off The Wall』
か『Thriller』収録曲だ、というところまでは思
い出せました。気になるので捜してみたところ、
それは「The Lady In My Life」でした。当時
(もちろん昭和です)「何か歌謡曲みたいだな
〜」と思っていたこの曲とサビのコード進行は
ほとんど一緒ですね。まぁメロディから曲調か
らコンセプトから何もかも違うので変更する気
は全く起こりませんでしたが、若い頃の刷り込
みってスゴイな〜と思いましたよ。だって『Off〜』
は凄く聴きましたが、それでさえ今まで制作の
参考にしたことはありません。ましてや『Thri–
ller』はその半分くらいしか聴いていないし、し
かも「T–he Lady 〜」を意識したことは一度も
なかったんですからね。当時の生活を考えると
録音して流しっぱなしにして寝る、本を読む、
のどちらかでしか聴いていなかったと思います。
それなのに、当時の「歌謡曲みたいだな〜」と
いう感想が現在の”歌謡曲的ムード”の回答にな
ったのが可笑しかったんです、その時は。
勿論これはマイケル・ジャクソンが亡くなる半
年以上前のことですからシンクロニシティでも
何でもないでしょう。ただ、無意識下に数十年
ありながら、その後影響を及ぼす程の力を持つ
音楽––それを作り出せた人物が亡くなってしま
ったことは悲しむべきことだと思います。マイ
ケル・ジャクソンの死に関してある雑誌でコメ
ントを求められた時、真っ先に浮かんだのがこ
のことでしたが、自作を絡ませて説明するのが
はばかられた為話さなかった出来事です。
さて、イントロがストリングス・リフであるこ
とは決まっていてもアレンジは何も決まってい
ない。そしてヴォーカリストも決まっていない
わけですが、すぐにこの曲はキリンジに歌って
貰いたい、と思いました。完成形で聴かれるコ
ーラスは全て作曲時点から出来ていたもので、
デュエットではなく、はっきりとメイン・ヴォ
ーカリストの存在はありながら、コーラスにも
パーソナリティが欲しい。それを満たせるのは
キリンジしかいません。
そして高樹くんには作詞をお願いしたのですが、
この曲に関しては映画の内容(マンガが原作)
と離れるわけにはいかないので「バレエ、もし
くはそれを匂わせるもの、そして天才性」とい
う”言わなくても〜”なことだけ伝えてお任せし
ましたが、いつもながら見事な手捌きでした。
「コーラスも先に入ってるって〜、まぁ僕らも
そういうのありますけどねっ」っと笑ってまし
たが、どうもありがとうございます!
前後しますが仮歌で家に来てもらった時はかな
り久々で正直言うと「懐かしかった」です(笑。
作業は順調に、そしてダラダラと話しをしてい
ました。キリンジの場合は久々に長話という感
じでしたが、仮歌で初対面になるアーティスト
も多いので、結構仮歌時に話しますねー、ほぼ
世間話ですけど。まっそれは良いとしてっ。
スタジオでのヴォーカル録りも順調そのもので
したね〜。泰行くんの声がスピーカーから流れ
てきた途端、何ともいえぬ安心感を感じました。
一緒に作業したのは数年ぶりでしたが、その歌
声、姿勢とも以前と全く変わらず、そこに新た
な表現も感じられる素晴らしいものでした。
高樹くんには風邪が治りかけという状態にもか
かわらず多くのコーラス・パートを歌って貰い
ました。お二人ともどうもありがとうございま
した!
また前後しましたね(苦笑。サウンドはストリ
ングス・リフ中心でバレエ映画に関連している
ので、クラシカルな要素とポップスの要素の配
分を考えました。多くのパーカッションはポッ
プス・チームの中でのダンス要素です。ブラッ
ク・ミュージック的リズム・トラックにするの
が一番明確にクラシック、ポップスにおけるダ
ンス要素を融合させる手法だとは思いますが、
それは意識的に避けました。リズム的にはジャ
ズ・ファンク的なもの+ブラジリアン・パーカ
ッション・アンサンブルにし、ベーシストがグ
ルーヴを形作ることにより、曲中はリフのグル
ーヴ+αの形になったと思います。
木管はすべて山本拓夫さんです。バス・クラ録
音時に「もう一本の方がよりハマりそうだから、
とって来るよ」と仰ってわざわざ家にとりに行
って下さいました。確かにそちらはより艶やか
で僕らの思う「よりバス・クラらしい」音だっ
たのです。
ミュージシャンの皆さんからのちょっとした提
案の積み重ねが、曲を何倍にも美しく響かせて
くれる––それを再認識した出来事でした。
この曲は原型からかなり変わりましたね。パ
ラレルと同時期に作っていて、最初は男女デュ
エット+コーラスで冬っぽい感じにしようと
思っていたんです。サウンド的にももっとア
メリカ寄りな感じになるだろうと予想もして
いました。
しかし作曲から時間が経ち、他のマテリアル
も揃ってきた時にまず”男女という組み合わせ”
がバランスしなくなってきました。しかし曲
の構造上、一人で歌う形ではないので、ソロ・
シンガーのフィーチャリングはありえません。
そこでケミストリーのお二人の登場となった
訳です。いや、正確には以前「ずっと読みか
けの夏」を歌って頂きましたので”再登場”で
すね。彼ら二人はヴォーカリストとして全く
違うタイプだと思うのですが、その二人のハ
ーモニーはそれが一つの音色であるといえる
程融合しています。メイン・ヴォーカルとし
ての個性二つがハモり、そしてまた別の音色
をつくりだすのはかなり希有なことですよね。
そして男女デュオ案はなくなりましたが、コ
ーラスという形でいつかさんに華を添えて頂
きました。「横顔」でもやりましたが、男性
メインに女声が入るのは良いものです。
作詞はいしわたり淳治さんです。以前ある仕
事で、男女デュオ、しかも構成がやっかいな
曲にこれ以上ないという程見事な作詞をして
頂き、今回もまたまた3人シンガーがいると
いう曲をお願いしたわけです。毎度ややこし
い曲ばかり頼んでいる(笑。
そして英詞の選び方にニヤっとさせられるナ
イスな歌詞が届き、オケ的にはデモに近い状
態で歌入れをしたのですが、どうしても元々
勝手に持っていた冬の感じが拭えない。冬限
定の歌詞ではないのにです。もちろん歌詞の
所為などではなく、様々な要因によるのでしょ
うが、メロ、声、歌詞、サウンドが相互に巧
く機能しないのです。そこでまずはサウンド
を、––その状態では上モノはほとんどない状
態だったので––コード進行から見直すことに
しました。というよりも”リズムと歌詞ありの
歌だけ”というリミックスの最初みたいな状態
から新たにコード進行を作りはじめたのです。
結局は全取っ替えになってしまったのですが
(笑)、それで4者が機能し始めました。そ
の頃ちょうどプリファブ・スプラウトの新譜
(といっても過去音源の再構築)リリースが
あり、聴いているうちに、この曲の歌詞、歌
唱と80年代中〜後半のあるアプローチは親和
性が高いことに気付きました。そこでその時
期のギター・バンドが表面的にスペクター、
バカラックにアプローチした軽さを加味し、
みなさんお聴きの形となりました。
制作の手順としてあまりない順番だっただけ
に楽しい体験でしたね。
1曲目「Holy Taint」の項で1〜2曲目は続け
て聴いて頂きたいと書きましたが、7〜8曲目
も同じですっ。7曲目もしくは8曲目オンリー
(こっちは居ないか・苦笑)でダウンロード
購入のみなさま、ここはひとつ、是非両曲続
きでお聴き下さいませ!そんな作りになって
ます。というか、この曲は前曲のエンディン
グからシームレスで浮かんでしまった曲だっ
たので、そこに無理矢理空白を入れることが
出来なかったんです。そういった理由でレコ
ーディングも前曲のドラムが終わった後のパ
ート、アコピのソロ部分から始まりました。
前曲のシングルvers.を作った後、アルバムvers.
のエンディングは未定のまましばらく放置し
てありました。しばらくするうちに、シング
ルのvers.とはもう少し変化をつけよう、そし
てF.Oではない方法で余韻を残したいな〜等と
考え始め、ドラム終わりでエレピ、パーカッ
ションを残して次の曲につなげようと考えた
のです。その時は曲順次第で次の曲にうまく
つなげようとつなぎ部分を作っていたのです
が、それがそのまま曲のイントロになり、エ
クスパンドする形でこの曲が出来ました。
外スタジオで最後に録音したのがこの曲で、
またろうさんのパーカッション録音にてこの
アルバムの”録音”は完了したのです。そうい
えば『Shiplaunching』の時も最後の録音は
またろうさんのボンゴ@「Shiplaunching」
でしたね。いつもありがとうございます!
実はこの曲も収録されたvers.の後に倍テンに
なり、コン・ディミ・モントゥーノ上でティ
ンバレスやコンガが炸裂するパートがあった
のですが、前後関係でカットとあいなりまし
た。「Shipahead」といい、『Shipbuilding』
収録の「Mizzenmast(edition1)」といい、
歌ものにはさまれたインストは編集により短
くしてしまうことが多いです。とはいえカッ
トされた部分にもエキサイティングな場面も
多いので、何かの機会には復活させたいな
と思います––と1stの頃から言ってますが
(苦笑、ホントにそう思います。
因みにタイトルのD.Gはドン・グロルニック
を指します。
某ラジオ番組でこの曲のデモをオン・エアしま
したが、作曲時と編曲後の様子がかなり変化し
た曲のひとつです。
この曲のモチーフはかなり前からあったもので、
それをアルバム制作中盤頃にオン・エアしたデ
モの形にまとめました。番組をお聴きになった
みなさんには重複する情報ですが、トニー・オ
ーランドの「Sweet summer days of my life」
を聴いていて、イントロのメロウなストリング
スとバタくさい曲調に新鮮さを感じ、作曲をし
始めたものです。視線としてはキッド・クレオ
ール的なものでしたね、当初は。
「Sweet〜」が収録されている『New ragtime
follies』は15〜6年前、まだアナログをたくさ
ん買っていた頃に確かナッシュビルのレコ屋で
100枚くらい買った中の一枚だったと思います。
やたらシールドのものが多く、しかもかなり値
引きしてくれたのを覚えています。
当時はT.オーランドが誰であるかも全く知りま
せんでした––というか今も全然詳しくないです
(苦笑。まっ、そこは深入りせずに進めますが、
「Sweet〜」のメロディや曲構造に新鮮さを感
じた訳ではありません(聴いて頂ければ解ると
思います)。曲調とイントロの4小節、曲中刻
まれるクラヴィが面白くて「そんなグルーヴを
活かせる曲を作ろう」と思ったんですね。しか
し動機は確かにそうなのですが、お聴きの通り
完成時にはストリングスもクラヴィもないです
し、曲調という点においてのみ共通点をみいだ
せるくらいになっています。でもそれくらいが
作曲におけるインスピレイションの昇華の形と
して理想的なんです。
0→1への後押し。それがあれば後は何もいりま
せん。
この曲は安藤裕子さんに作詞をお願いし、歌っ
て頂いたわけですが、彼女のパブリック・イメ
ージとはかなり異なった曲調であると思います。
僕自身も彼女に”美しい歌声と個性的な唱法を操
るバラーディアー”との認識を持っていました。
しかし彼女自身の作品をアルバム単位で聴いた
とき、一方向でない曲毎の表現の幅広さがとて
も印象に残ったのです。
もちろんシンガーであればどなたでも曲調に合
わせ適切な表現を施し、最適な結果を残すでしょ
う。しかし安藤さんの場合、幅広さはいうまで
もありませんが、その適切さにはとても高い精
度を感じたのです。それは設定された役柄を演
ずる巧みさの精度とも言えましょうが、それ以
上に”演技”という意識を感じない”自然さと曲調
との整合性”の精度だと感じたのです。そうであ
れば彼女自身の作品とは距離があるであろうこ
の曲も高い精度で適切に、そして自然に曲の核
心を表現して頂けるであろうと考えました。も
ちろん結果は聴いて頂ける通り、素晴らしいも
のでした。
また歌詞については、以前ある仕事で僕の曲に
作詞をして頂いたことがあり、それがとても素
晴らしかったこと。そして上記の高い精度は自
身でお書きになった言葉の方がより発揮できる
だろうと思い、作詞もあわせてお願いしたので
す。
安藤さんに歌って頂くことが決定した時点でも
いつも通りアレンジはまだ手付かずで、デモ段
階のものをお渡ししてありました。そして僕の
方はアレンジをどうしようか、と考えだすわけ
ですが、当初動機にもなったリズムの刻みやイ
ントロのメロウさ、実際にできたこの曲、そし
て安藤さんというそれぞれの要素を合致させ想
像したところ、そこにはあまり必然が感じられ
ませんでした。曲のモチーフができてから時間
が経ってしまったことも理由のひとつでしょう
し、アルバムの他の曲とのバランスで普通にバ
ウンスしたミディアムにはしない方が良いだろ
うという判断もありました。そんな時にシング
ルとしてのリリースが急遽決定したこともあり、
いよいよ諸々を再考し、新たな落とし所を見つ
ける必要を感じ始めたのです。
とはいえまだ仮歌作業前(安藤さんとも面識の
ない状態)だったので通常なら「仮歌を録って
から聴きつつ考えよ〜」とかのんびり構えると
ころです。しかし彼女が歌詞を書き始めている
との情報があり「コンセプトだけでも見える音
を渡してあげないと〜」ということで仮歌前の
状態でサウンド・コンセプトを練り始めること
になったのです。
お聴きの通り、結果的にはホーン・セクション
・フィーチュアのアッパーな作品となったので
すが、落とし所という意味ではレネー・オルス
テッドの作品はよいヒントとなりました。
デヴィッド・フォスター・プロデュースの女性
アーティストですが、マイケル・ブーブレに代
表されるアプローチ––スタンダード、オリジナ
ルの両方を含むが、基本的なサウンドはオーソ
ドックスなオケものかビッグ・バンドもの--の
アレです。
D・フォスター制作以外でも’00年代から頻繁に
見られるアプローチで、アメリカ本国ではシニ
ア向け、ナツメロ的に機能している部分も大き
いでしょうが、日本人である僕にはそうは機能
しません(笑––加えて年齢的にも。しかしそう
いったアプローチでの豊かなサウンドは好きな
ので良く聴いてはいたのですが、大体が男性ヴォ
ーカル、女性の場合はベテラン・アーティスト
の作品が多かったのです。しかしR・オルステ
ッドの場合は若々しい歌声(実際若いです)を
そういった豊かなサウンドと同居させ成立させ
得ている点で他とは違う新鮮さを感じました。
その組み合わせには新鮮さを感じる一方で、ビッ
グ・バンドとそれに付随するオーソドックスな
編成がどうしても持ってしまう企画性は不必要
と判断し、あくまでもポップスの形態––この場
合はE・ベースやE・ピアノ、バック・ビートの
スネア––で、セクション・フィーチュアという
アプローチが決定しました。
こうしてアルバム収録のオリジナルversのコ
ンセプトが出来上がり、アレンジを完成させ
ていくのですが、シングルversをオリジナル
とは少し違ったものにしなければいけなくな
る、というオマケが付きました(苦笑。
そしてそのversはアルバム付属のDVDにも採
用されています。
作曲という点ではかなり早めに出来ていて、作
った当初は女性向きに分類していた曲でもあり
ます。そして「冨ラでバラードは初だな〜」な
んてことも同時に思っていました。仕事でバラ
ードを沢山やらせて頂いている、という理由の
みによるのでしょうが、今まで冨ラで純然たる
バラードをやったことなかったんですね。僕の
中では「ずっと読みかけの夏」「道」「耐え難
くも〜」等”バラードだという人もいる”よう
な曲は全て”ミディアム”という括りなんです。
現在邦楽界に限らず、いつの時代もバラードは
有効ですから沢山のバラード曲があります。勿
論バラードは好きですが「沢山あるから冨ラで
やらなくても良いか〜」というなんとも大雑把
な分類を、そしてなんら説得力をもたない限定
を自らに課していたのも間違いないことです。
では何故そんなバラードをやるに至ったかとい
えば––などとわざわざいう程のことはなく、全
く単純な理由ですが––リアルタイムで多く聴か
れるバラード数タイプと、自分の書きたいバラ
ード数タイプを全く違ったもの、と認識するに
至ったからです。いや、そんなには違わね〜だ
ろって感じですよ、自分でも(汗。全体からみ
れば小っさいことなんですから。ホント小さい。
ただその小さな手法の有無が曲の進む方向を、
そして全体のムードを大きく分かつのもこれま
た事実。現代多く聴かれるバラードにおいて、
あたかも必須の条件であるように共通して使わ
れる”その音楽的手法”を除いてもなお、必要な
エモーションとストーリーを––自分なりには、
ですけど-–満たすことができる、などと思い
やっと制作するに至ったわけです。
作り手の意識はそんなものです。
ピンポイントでの確証が大きな自由につながる
––場合もある、くらいの(笑。
で、この曲は2009年2枚目のシングルとしても
リリースされたのですが、その際に1枚目「エト
ワール」がミディアム〜アッパーといえる曲調
だったので、夏の終わり、初秋というリリース
時期も考えてミディアム〜バラード・タイプの
曲が良いだろうと考えていました。『Shipahe-
ad』では「夜奏曲」もバラードですが、そのタ
イミングでは出来ておらず、バラード・タイプ
の曲は「パラレル」のみでした。そこで曲をい
ろいろと見直していたところ、女性が歌ってこ
の曲を順等に美しく仕上げることはできるだろ
うが、男性の力強さを加味することも可能なメ
ロディではないか、というよりむしろ加味する
ことでフェミニンでメロディアスなだけでなく、
より強く体に浸透するメロディになるのでは、
との考えに至ったのでした。
そして以前から約束(笑)をしていた秦さんに
そのタイミングで参加して頂けるということだ
ったので歌って頂いたのですが、実はギリギリ
まで曲を決めかねていて、秦さんには仮歌を2
曲歌って頂いたのです。しかももう一曲はアッ
パーな曲(笑。ミディアム〜バラード・タイプ
で、とか言っておきながら「実際歌ってみて新
たな発見があるやも知れぬ」という欲張りなや
り方ですね。そちらもとても素敵でしたが、や
はり初志貫徹なのでしょうか、結果的にはバラ
ードである「パラレル」を歌って頂くことにし
ました。このようなやり方は初めてで、お互い
のマネージャー同士が知り合いだったというこ
ともありましょうし、秦さんにも無理を聞いて
頂きました。ありがとうございましたー!
そして松本隆さん。もちろん松本さんとは是非
またご一緒したいとず〜っと思っていました。
『Shipbuilding』で2曲作詞して頂き、その後
も何曲かご一緒させて頂きましたが、冨田ラボ
でもう一度歌詞を書いて頂きたい––との思いが
尽きる筈などなく、今回やっと念願が叶ったの
です。
言葉それ自体、配置、フォルム、テーマ、全て
がとことん美しい。そして音符自らが言葉を発
しているかのように錯覚させてくれるのです。
僭越ながらいつもそのように感じます。
さて、上記のような布陣に決定し、次にアレン
ジを考える段になるのですが、こういったスタ
ンダードなバラード曲の場合は作曲時にほぼコ
ンセプトは決まってしまいます。
意識の上ではA.O.R以前、今も昔もヒップとは
言い難いが、しかしスタンダードなものをイメ
ージしていました。ルパート・ホルムズ、ステ
ィーヴン・ビショップ、ランディ・エデルマン、
バリー・マン、ポール・ウイリアムスからリチャ
ード・ロジャースといったコンポーザーのこと
が頭をよぎっていました。実際に彼らの作品を
聴いて何かを参考にするのではなく、記憶にあ
るイメージを手繰り寄せ、彼らの高揚を疑似体
験する、というような作業が多かったと思いま
す。もちろん厳密に彼らを、そしてその時代性
をノスタルジックな観点によってのみシミュレ
イトするような方向性ではありません。しかし、
彼らがやってきたことで現代に引き継がれてい
ない部分に目を向けることが制作の動機になっ
たといえるでしょう。
でも大サビの展開は明らかにブラジリアン・コ
ンセプトですね、後で聴くと(笑。それはいつ
もそう。どの曲でもどこかでかならずそうなっ
てしまいますから(苦笑。
ミディアム16ビート、メジャー7th、マイナー9th
系中心という、自分的には慣れ親しんだ、非常に
ベーシックなフォーマットによる曲ですね。
いつものように鍵盤を弾きつつ歌いながら作曲し、
いつものようにレンジがかなり広くなってしまい
ました(汗っ。これは僕が”数オクターヴの音域を
誇る!”とかでは勿論全然なくて、数曲を歌いきら
なければいけないライヴのことなど念頭になかっ
たり、結果どなたに歌って貰うかわからない状態
での作曲なので、声質のおいしいところとか(自
分の声ではどこにもそんなもの感じませんが)ま
ったく考えずにファルセットだろうがなんだろう
が、曲の行きたいようにメロを作るというやり方
に起因しているのだと思います。にしても、この
曲はレンジが3オクターヴ弱になってしまい、さ
すがにその時点で「あ〜、一人のヴォーカリスト
が一本通して歌う構造の曲ではなく、サビがコー
ラス・ワーク、もしくは複数のヴォーカリストに
よるヴォーカル・アレンジを施すような曲が書き
たかったのか〜」と気づきました(作曲中そうい
ったことになかなか気づけない)。
そしていつものようにワン・コーラス作り、他人
事のように聴いていていて「サビに向かう展開と
サビ突入前後の転調激しいな〜(笑、でも全体の
フォームもメロのシェイプも良いから崩せないし
な〜、他人に歌って貰うの申し訳ないな〜」など
と考え、「あっ、サビは女性コーラスが当初のレ
ンジを引き継ぎ、メインはオクターヴ下っつー形
にしよう。男声+女声コーラスは冨ラでやったこ
となかったし〜」ということで、前曲での一十三
さん、「残像」での”いつか”さんのお二人にコー
ラス部分をお願いすることにしました。
作詞は桜井秀俊さんです。以前、氏のソロ・アル
バムでご一緒した時に、氏特有の言い回しに魅力
を感じていたからです。「自分の中ではシリアス
な部類に入る曲である」という、今回数曲におい
て作詞家の方にお伝えした、どうとでもとれる、
聴けばわかる、だからどうしたっ、ともいえる言
葉とともに”お任せ”するという、半ば無責任な依
頼のしかたもいつも通りでしたが、氏における”シ
リアスであること”と、出口としての”ポップスの
役割”を全うさせた手際の良さはさすがです。
いままで歌ものを作る際には定型過ぎる程、定型
のサイズ(構成)しか作っていませんでしたが、
この曲は少し変則的なサイズになっています。そ
ういう曲だったといえばそれまでですが、”アルバ
ムという単位”の未来に関する様々な憶測、意見に
無意識に反応した結果かもしれません。「まー、
わかるけどポップスがシングル・マナーの曲オン
リーになっちゃって大丈夫?」というような。こ
こでいう”シングル・マナー”は曲構成を指します
が、”シングル・マナー”:”そうでないもの”が世
の中に9:1でも別に構わないけど、10:0は絶
対つまらんからね。なんでもそうです、度合いで
す。
と、それはここではどーでも良い話。変則的な2A
の部分で歌詞が比喩的ではなく、直接的になって
いくのはもともとあったハーモニーの変化に桜井
さんが反応して下さった結果だと思いますが、そ
の歌詞に反応して今度はアレンジがどんどん捻れ
ていきました。最初リズム隊は普通にリズムを刻
んでいたのですが、ドラムの3連フィルの最後の
音符からメトリック・モジュレーショナルな場と
化しました。フィルで埋め尽くされている1小節
での出来事なのであきらかなそれではありません
が、必然としてそのグルーヴが必要だったのです。
因みに2拍3連や3連の一個の音符を一拍に見立て
て4拍子を組み立てるモジュレーションは既に普
通の感覚になってきたような気がします。普通に
そういうグルーヴ、そういう歌い方が気持ちよい、
という感じ。知識段階のものを実践しようとは思
いませんが、良いグルーヴだと感じてしまったも
のを止める気はもっとありません(笑。
えー、枝葉に過ぎました、全然曲解説になってな
いです、はい。でもリズムが伸び縮みする(エル
ヴィンのことではないっ)のはホント気持ちよい
ので、興味のある方はBad Plus『For All I Care』
の一曲目やB・マルサリス新譜での「リズマニン
グ」など聴いてみて下さい(基本はトリロクや
ヴィニーですけどね)。
そんな導入からツーバス、ディストーテッドな混
沌パートを経て通常に戻るまでのアレンジは歌詞
に誘発された部分であり、その制作中はとても楽
しい時間でありました。
ライナーも5曲目になりますが、文体や文字数が
日によってバラバラです(笑。それぞれの曲調や
曲の長さとリンクしているように見えなくもない
ですがね。でも–––たまたまだと思います(笑。
S・Mさんのご指摘通り、イントロは非常にガーシュ
イン的です。もともとランディ・ニューマンのこ
とを考えていたので、どちらにしろ”大丈夫だった
頃のアメリカ”を懐かしんで書いた結果だと思いま
す。
とはいえ僕は”アメリカの音楽を多く聴いてきた”
というだけで完全に日本人なわけで、この曲に
限らず”完全にドメスティックな価値観”に支えら
れた音楽を作っていると思っています。現代邦楽
主流のそれとはかなり違うと思いますが、非常に
ドメスティックであることに間違いはありません。
(アメリカ音楽がパーツの大半を占めている)音
構造だけでも意図するところはアメリカ人には理
解できないと思います−−優劣の話しではないです、
誤解のないように。しかしドメスティックである
ことは僕にとって非常に心地よいことなのです。
一曲目にもみられますが、この曲もジャズ・イデ
ィオムに拠らないある転調の仕方を含みます。制
作中、プチ・ブームだったのでしょうか(笑。
2008年の仕事の影響かも知れませんね。
ジャズ・イディオムによる一時的な転調(僕らは
こちらを普通の転調っていってます)は曲中どん
なに頻繁に使われていても、行き先を事前に提示
してくれる場合が多く歌いやすい(慣れていれば、
です)けど、そうじゃない転調は歌うのが大変な
んです。
しかし一十三さんは素敵な歌声を聴かせてくれて
います。柔らかく、無垢な歌声。言葉面ではラン
ディ・ニューマンとは正反対とも言えましょうが、
ある心象を表現するに同様の効果をもたらしてい
ます。そこに共通項を見いだせる感性が日本人
特有であり、先ほどドメスティックと記したほん
の小さな一例でもあります。
この曲は数回の転調を経て、(譜面を書く僕にと
っては)非常に面倒なキーにたどりついてからが
長い、というややこしいものなのですが、この曲
に限らず、難解な譜面をも歌うように奏でるミュ
ージシャンの方々にはいつも敬服致します。彼ら
の”歌”こそが曲を有機的に、妄想を現実にしてく
れるのです。
ストリングスのレコーディング中、イントロ後半
ピチカート後の弓に変わった部分が最初もっと硬
めの音色で、「カントリー的に聴こえるのがコン
セプトには合致していて面白いか〜」っと一瞬思
いましたが、金原千恵子さんに「〜なんだけど、
柔らか目のアプローチってある?強さは今のまま
でさ」と相談。「じゃ弾く弦(ポジション)かえ
てみるね」ということでいつも通りテキパキとメ
ンバーへの指示を終えて「やってみま〜す」の声。
途端にみなさんお聴きのこの音色へ。「あ〜やっ
ぱこっちの方が全然良いや〜」とOKテイクにな
りました。さすが!いつもありがとうございます。
あと、この曲では本物のチェレスタを初めて弾き
ました。サンプルでのそれはいままで意識的にか
なり避けてきましたが、本物は格別ですね。”最も
サンプルで代用されている楽器ランキング”上位
にランク・インしている楽器だと思いますが、実
際弾くと微妙な音と音とのつながりが記憶にある
とおり(当たり前)。楽しかったっす!
